台風19号の被害から半年

台風19号が各地に大きな爪痕を残してから、半年が経ちました。

世間では新型コロナウイルスにまつわる話題で持ちきりですが、半年という節目は、被災地に目を向けるチャンスです。お時間に余裕がある方も多いかもしれません。ぜひ被災地のこと(4月14日/16日で熊本では地震からまる4年になります)を考えていただければ嬉しいです。

長野の半年目をレポートします。

長野の桜も、もう満開に近い状態です。例年よりは早めに季節がめぐっているようだと聞きます。

まだまだ寒暖差もありますが、4月に入って本格的に暖かくなってきたのも一因か、人気のほとんどなかった地域にも、ポツポツ作業をしている住民の方の姿が見えるようになってきました。

りんご農家さんにとっては、この時期は花がつく前の作業(剪定や消毒など)で忙しいようで、今までふらっとお邪魔して会えていた人たちも畑にいるようです。

農業ボランティアセンター・地元の農家チーム・業者などの連携によって、漂流物と土砂が山盛りだった農地は、ほとんど整備され、この次の収穫に向けて動き出しています。

新しいSS(果樹を消毒するための農機具)が動いている姿を見ることができ、とても嬉しい気持ちになりました。

ただ、「こんなに雪が降らない年はめずらしい」と地元の人もおっしゃるぐらい、今シーズンは暖冬だった影響が、この先どれくらい現れるのか、まだまだ気になることは沢山あります。

春からの困り事の一つに、りんごの受粉を担う蜂がいない、という問題がありました。蜂の受粉と人の受粉では見ただけで差が分かる、と言う人もいるほど蜂は農家さんにとって重要な存在。しかし豪雨で蜂たちが巣箱ごと濁流に流されてしまいました。

蜂たちに戻ってきてもらうために、すばこ大作戦というプロジェクトが始まっています。地元の農家さんや支援者が中心となって、巣箱作りと蜂の里子募集をしています。

里子募集を手伝う人がいたり、家の木材を提供してくれる人がいたり、組み立てるお手伝いをする人がいたり。プロジェクトの参加者も増え、着実に地元長野で問題解決する姿が見えてきています。

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地元の動きは、畑以外にも。毎週1回、定期的に地区の女子会を始めた所もあります。それぞれの避難先にバラバラに暮らしているため、日程を設定しないと顔を合わせられないですが、それでも地域のつながりを切らさないように、心が寂しくて落ち込んでしまわないように、間をつなぐ活動が住民さん主体で行われているのが良いなぁと思います。この動きは隣の地区にも広がりそうで、更にうれしい流れです。

こんな町にしたい、という理想を女子会でワイワイ持ち寄った結果。とても楽しそうな町です

3月の中頃には、それぞれの地域(特に長野市北部)で活動している団体が情報共有のために集まりました。

いつもは長沼・豊野の元の市町村で区切りがちですが、特色の違いを踏まえつつ、必要な支援をまとめられたらという考えです。これには、社協・地元NPO・新しく地元で生まれた団体・外部支援団体など、多様な顔ぶれが集まりました。可能であれば、定期的に地域の問題や課題を共有し、ニーズ・支援者・技術を共有できればと思います。

また、豊野地区は、ぬくぬく亭を中心として独自の情報共有を進めています。関わる団体たちの運営会議と、活動の中で見えてきた心配な人のケアを目的として、福祉関係の機関が集まるケース会議。

訪問だけではなく、そこから拾い上げた福祉ニーズを関係機関へつなぎ、必要に応じてボランティア派遣もしています。

それぞれの組織が主体的に関わって、良い雰囲気で運営されていると感じます。これだけ地元の組織たちが主体的にサロンを運営し、地域のニーズの受け皿になっているケースは、なかなかめずらしいのではとも思います。今までの地域との関係性が大きく影響していますが、他の地域でもこういった流れが生まれたらと思わずにはいられません。

 

 

公費解体などの制度が実施され始め、空き家や工事現場が目につくようになってきました。我々が関わったお家の解体が進むす様子を見ると、家主さんのお顔が分かるだけにちょっと淋しくなります。ちょっと関わったお家なだけで淋しく感じるのですから、ここで生活をしていた住民の方々のお気持ちはどれほどでしょうか。

 

公費解体の申込み期限は今の所、9月です。まだまだ家をどうするのか悩んでいるという方も多くいらっしゃいます。

もちろん、リフォームや再建も始まっています。新しいお部屋を嬉しそうに見せてくれる方や、まだリフォームどうしようか迷っているという方も。自宅の再建について、どんどん差が生まれてきて、焦る方もいるでしょう。

揺れる気持ちや、ここから新しく生まれていく再出発の動きを見守り、そばにいる存在が必要だと感じています。

長沼支所。もうすぐ仮支所が完成します

ただ、どの支援活動も、新型コロナウイルスの影響を大きく受けています。元々予定されていたイベントや炊き出し、サロンなど多岐にわたる活動が休止または延期になっています。災害ボランティアセンターも休止、我々も外部からの支援者受け入れ停止から、活動休止という形に警戒レベルを上げています。

ぬくぬく亭で神楽。三密を避けるために窓やドアはあっけぱなし

このまま支援がストップしてしまい、つながりが切れてしまえば精神的に厳しくなり、それが二次被害につながるのではと危惧しています。そんな心配から、豊野ぬくぬく亭では炊き出しは中止しつつも、最新の注意を払いながら個別訪問や集まる場の開場は継続しています。

地域の人たちから愛されている飲食店。復活するも、その先はどうなるのか、心配なことが沢山です

水害から復旧したイチゴ農家さん。例年はいちご狩りで賑わうハウスですが、コロナウイルスの影響で人影はなし。熟れるのをただ待つだけのいちごがたくさんありました。

また、自粛ムードが続いている影響で、被災後復旧した商店や農家さんでも客足が遠のいて影響を受けています。自然災害+新型コロナウイルスの影響。これは長野に限ったことだけではないでしょう。いつこの状況が変化するのか、見守るばかりです。