静岡豪雨での活動について

7月8日〜8月3日を一つの区切りとして、静岡県社会福祉協議会からの要請にもとづいて活動をしてきました。

被災された方の再建サポートとして設置された「地域ささえあいセンター」も、ニーズ収束に伴い、緊急体制から継続的な関わりの体制へと移行しています。

沼津市での活動の報告と、現地で分かった課題についてまとめました。

被災した方へどうやって支援を届けていくのか枠組みを相談、地域ささえあいセンター全体の運営支援として、沼津市社協や静岡県社協に対してアドバイスなどサポートをしました。

現地調査で気をつけて見るポイント、ニーズの拾い方、家屋再建の具体的な手順、など実働の部分をサポート。ノウハウの提供によって、地元社協だけでの運営ができるようにと考えました。

今後発生する課題を提示したり、福祉ニーズと呼ばれるような個別支援が必要な案件の今度の方針を確認するなど、被災エリア全体の課題解決について細かく詰めたり、目の前の問題解決だけでなく、長期的な被災地の歩みを視野に入れながら、助言・ノウハウ提供ができました。

また、同じく要請に基づいて現地入りした愛知人と沼津市社協が連携を取れるように間をつないで調整。現調でささえあいセンターでの対応が難しいと判断したニーズに対応してもらう流れを作りました。迅速な対応のおかげで、現在技術ニーズ(床下の土砂・断熱材撤去や床下乾燥が必要なニーズ)はほとんど対応完了したようです。

被害規模とその対応沼津市の被害件数は、甚大と判定される規模ではありませんでした。被害規模の影響もあったのか、沼津市では災害対策本部が設置されませんでした。

このため災害対策本部と関連する「災害ボランティアセンター」の設置が難しく、最初の課題となってしまいました。

被災されて困っている住民がいるのには変わりないとして、関係者で協議の結果「地域ささえあいセンター」という名称で沼津市社協が被災者対応の基盤を作ることが決定。

後半に言及する「災害救助法」についてもそうですが、被害規模が甚大でないからこその課題を改めて感じました。

借家問題

今回、アパートなど多くの借家も被害を受けました。窓口対応をしていると、家のアパートが浸水して、住人は2階に避難しているの、などという大家さんからの相談も目立ちました。

借家の持ち主はもちろん大家さんなので、家屋の復旧は大家さんの権限の範囲ですが、家の中の物は住人の物です。

濡れた家財などの廃棄、家財搬出は住人と協議、壁剥がしや床下の対応については大家さんとの協議が必要です。

家の中といっても、壁や床など家屋の構造は大家さんの持ち物なので、濡れた畳の処分などは大家さんの了解がないと進められません。

「このアパートは取り壊すつもりだから、壁や畳はそのままにしておく」「濡れた畳も乾けば使えるのではないか」などという大家さんの方針により、濡れた畳の上で生活されているケースなどもありました。

こうした住人と大家との課題は、他の被災地でもよく発生します。

両者のコミュニケーションが上手くいっていれば問題ありませんが、そうした普段からの関係なども影響します。特に、古いアパートなどだと、退去してほしい人と住み続けたい人との対立などにもなってしまいます。

多機関で関わり、いろいろな制度や法律を活用しながらの対応が求められました。

静岡県の備え

静岡県では、南海トラフ沖地震の発生に備えて、行政や社協民間団体などによる訓練が毎年実施されています。

一年に一回開催され、県内の関係機関が一堂に集まる機会が持たれています。昨年で15回目、つまり15年にわたって続けられています。それだけが原因ではないはずですが、県社協と市社協、市社協同士の交流が盛んな印象を受けました。

報道の光と影と被害件数

熱海の街が土石流に飲み込まれるショッキングな映像が、繰り返し放送されていたのは記憶に新しいでしょう。
あれらの映像によって、熱海が一番注目を集めましたが、沼津市を含めて被害は各地に発生していました。

沼津市の被災も、床上浸水件数は150件にのぼります。
その割には、ニーズの件数は少ない印象もありました。近くの熱海であんなに大変なことになっているのに、床下に水が来たくらいでは相談できないよね、という声もありました。

逆に、熱海市では注目が集まったことによる問い合わせ対応など、負荷がかかっていたとも聞きます。

被害規模・件数と被害の特徴、そして現地の状況を踏まえた報道や情報発信が求められます。

災害救助法の適応

災害救助法とは、災害発生後の応急期の応急救助に対応する主要な法律。
避難所の設置や仮設住宅の手配など、災害から国民を守るための行動の予算根拠です。

人口と被害件数の割合などによって、適応か否かが決まります。

適応されれば、災害応急復旧などの経費を国庫などから支出され、市町村の負担がなくなります。最近は、この災害救助法の弾力的な運用が進み、例えばボランティアセンターで必要な備品なども、国庫から捻出できるようになってきました。

しかし今回の沼津市の被害は、この災害救助法の適応外でした。

適応外になってしまうと、避難所の経費が市町村の自己負担になってしまうだけでなく、例えば応急修理制度や、被災者生活再建支援法など、被災者個人が家屋再建のための足がかりとするような支援制度も適応できなくなってしまいます。

今回、被災された方が自宅を修繕するには、個人がかけている保険や、個人の蓄えのなかで賄う必要があります。義援金や別の枠組みのお見舞金などが支給されるという話もありましたが、合計額は数万円だということでした。


応急修理制度も、被災者生活再建支援法も、それぞれが生活再建をしていくには足りず、現状に合わない部分があるという点は前から指摘がされています。

罹災判定の細分化など、改定なども重ねられていますが、今後もこうした制度活用面での課題などは議論していかなくてはなりません。

ITを使ったセンター運営

今回、ささえあいセンターの運営管理として、キントーンが使われました。実は静岡県社協で準備していたものがあり、それを活用した形です。

ニーズ情報や活動情報、ボランティア募集など、情報をオンライン集約していました。ただ、どうしても現場に合わないところもあり、改良が必要です。

今回は、比較的被害規模が大きくなかったので、お試し運用ができました。もう少し改良が重ねられれば、被災地での大きな力になるのではと思いました。

ただ、IT活用のためには、ソフトウェアだけでなくハードウェアの整備も必要です。社協というある意味アナログな組織との相性はあまり良いとは言えません。ハード面の整備支援など、今後IT化が進むと同時に必要な支援の領域が増えるなとも感じました。