【緊急支援】令和3年8月豪雨レポート

8月11日から降り続いた大雨は、九州だけでなく日本各地に大きな被害をもたらしました。
8月の梅雨のように長期間降り、嬉野市では降り始めからの降雨量は1000ミリを超えて、1カ月の雨量の3倍にもなりました。

この大雨の被害対応のために、災害支援プラットフォーム佐賀からの支援要請を受け活動を開始しました。佐賀県内各地のでの活動で分かった課題をレポートします。

2年で2度の被害

今回、大きく浸水した地域が武雄市と大町町です。2年前の2019年に被害があった地域とほとんど重なり、今回のほうが範囲が広く、浸水も深かったようです。

一部、今回初めて浸水した地区もありますが、多くは2年前に水害を受けて復旧が終わったような地区。新築5カ月の家や、まだ建築途中の家も被害を受けていました。
再建したばかりや、その途中での被災で、住民さんの落胆も大きく見られます。
ローンを組んだり、大きな出費をしたばかりの被害に、今後の再建に対して慎重になっている様子も見られます。

経済的な負担と後ろ倒しの復旧

前述のように、家が修復したばかりの被災で、真新しいフローリングが浸水してしまった家庭も少なくありません。
床も壁も張り替えたばかりのため、また新しくすることに、金銭的にも精神的にも戸惑いがある状況です。
こうした点を考えて、実際に支援者側も慎重になっています。

例えば、床を全部はがすのではなく、一部だけ開口してそこから乾燥をうながしたり、
壁も全部はがすのではなく、片面だけとか一部だけはがしたり、
カビの発生具合を見ながらひどくなりそうならはがしましょうとしたり、
今までの被災地支援よりも、より一層、金銭的な負担をかけないような家屋復旧がキーポイントです。

今あるものを、できるだけそのまま使うのが一番金銭的負担がありません。
こうなると、どうしても「ちょっと様子見ながらダメだったらはがしましょう」と慎重になる場面も多くなります。
そうすると、どうしても作業がゆっくりになったり、乾燥に時間が必要になったり
今までもそうですが、「なにが正解か分からない」中で、手探りで復旧が進められています。

関心の低下

今回の豪雨への関心は、前回よりも少ない気がしています。全国放送で取り上げられていないだけでなく、佐賀県内でも報道が少ない。
実際に、支援金・義援金の集まりや、物資の集まり方を見ていても、世間からの関心が薄いと感じます。

前回の水害は、2019年度に起きた最初の災害でした。加えて、油の流出という特殊ケースでもあったので、メディアでも取り上げられやすく、その分世間の関心を集めることができました。実際に「油の流出」というキーワードで覚えている人も多いのではと思います。
しかし、今回は前回のような注目を集める状況に該当しません。
加えて、7月の頭の熱海の土砂災害などが大きく報じられたことで、「自然災害復旧への寄付」の多くが動いた後だったのではないかとも思っています。
被災地では支援金や義援金、支援物資など、いろいろな形での民間の支援が欠かせません。

まだ先の長い復旧の道のりを、どう関心を集めるか、必要な支援を引き寄せるか、このあたりは支援者側にとっても大きな課題です。

土砂崩れ被害もある

2年前も被害のあった佐賀市金立地区や、記録的な大雨の嬉野市など、浸水被害以外の被害も発生しています。
どうしても、被害件数が多いところや、見た目にわかりやすい被害に注目が集まりがちです。中小規模の土砂崩れなどは、どこに被害があるのかすらも分かりにくいので、見過ごされがちですが、一つひとつの被害への対応は必要です。
県内各地で被害が発生してしまったため、全部を同時には難しいですが、優先順位をつけながら、こうした見た目に大きくない被害が見過ごされないようにしていかなければいけません。

嬉野市

振りはじめからの降雨量が1,000ミリをゆうに超えた嬉野市。土石流の発生などはまぬがれましたが、大規模な地すべりが起きていました。
20数世帯が住む山間の地区が、地面ごとずれているのです。幸い、そのズレが小さいため、甚大な被害にはいたっていませんが、家屋の基礎にヒビが入るなど、被害が発生しています。

あともうちょっと降っていたら、家屋ごと滑り落ちてしまうような甚大な被害に発展していたのかもしれません。実際に、地区によっては1カ月ほど避難指示が出ていて、自宅に戻れない住民もいました。
地区にはセンサーがつけられ、地盤の動きが感知できるようになっています。今後もまとまった雨が降ると避難指示が出るなど、状況が落ち着くには時間がかかりそうです。

それこそ、実際に地すべりが起きている地域をどうするのか、については住民と行政との協議が必要になります。
場合によっては、大きな土砂災害が起こった地域のように、対応に何年もかかるかもしれません。
地面が割れたり、基礎にヒビが入ったりと、雨の被害ですが、地震のような被害状況です。こうした地すべりの被害の前例が少ないために、取れる対策や過去のノウハウも少ない。手探りで何が必要なのか、何ができるのかを考えながら復旧を進める必要があります。

また、嬉野市は山間部での茶栽培が盛んで、嬉野茶が名産品ですが、その茶畑が土砂崩れの被害にあっています。こちらも、一つひとつの規模が大きいわけではありませんが、複数カ所が被害にあっています。

行政・社協・JA・NPOなどで協議を重ね、今後農業ボランティアセンターのような動きができないか検討をしているところです。

大町町、2年前との違い

大町町では、前回の水害では油の流出によってり災判定の基準が引き下げられていました。報道でもフォーカスされたり、特別な見舞金が出たりと、金銭的なサポートがありましたが、今回はそうしたものがないため、前回と比較すると公的な支援が少なくなる場合もあります。

三者連携の違い

被災地の復旧には、行政・社協・NPOの三者連携が重要です。しかし毎回ガッチリとした連携が取れるわけではありません。
武雄市では2年前の水害を機に立ち上がった「おもやいボランティアセンター」が民間のつながりを横に広げながら、活動を続けています。

一方大町町では、町の職員(地域おこし協力隊)が立ち上げた地域の交流拠点「Peri.(ペリドット)」などを拠点としながら、外部からの支援団体を受け入れながら復旧活動を進めています。
NPOとの連携強化のためのスペースを町役場内に設けるなど、大町町の方が情報を密に共有しています。武雄市でもNPOと行政の情報共有のための機会が設けられるなど、連携が進められています。

今後も、市町村それぞれの進め方や、関係者たちの活動のバランスを見ながら、必要な支援がなにか?を考える必要があります。

佐賀災害支援プラットフォーム(SPF)

佐賀県には、数年前に佐賀県内の災害対策のためのネットワークが発足していました。佐賀の中間支援組織として、各地の被災地域の情報を収集し、課題解決をはかっています。
今回現場で顔を合わせてみて、2年前の水害経験から間もなく再びの被害を受けて、外部団体からノウハウを吸収するという姿勢がとても感じられます。

会議を主催するだけでなく、被災各地で今までのネットワークを活かした調整や、足を使って現地の課題を拾い上げています。
コロナ禍での支援活動という面も意識し、いかに必要な支援を必要なだけ集めるのかを考えた対策を講じています。被災地のためのネットワーク、としてちゃんといきているよい事例になるのではと思っています。

上記のような課題がある佐賀を中心に緊急支援を続けています。
今回の支援メニューとしては、支援団体の支援。
主にSPF,おもやい、大町町CSO室の動きをサポートしています。

おもやい

おもやい(武雄)では、8月後半まで事務局と実働支援。
電話番、ニーズの整理、データ打ち込みなど、現場がガンガン動けるような体制づくりに手が回っていなかったので、そこをフォローしました。

また、大工メンバー2名が入れ替わりで現場活動をフォロー。現場調査や技術指導などを担いました。
結だけでなく、いろいろな災害支援団体がサポートしていますが、技術面をサポートできる人が少ない状況です。家屋面のニーズ対応のために、今後もスタッフの派遣を考えています。

大町町CSO連携室/ペリドット

大町町では、複数の外部支援団体が活動をしていて、彼らが情報共有をする場としてCSO室があります。
被災者支援のためには、団体の垣根をこえた支援調整の必要がありました。
現地の技術支援の窓口となったOPENJAPAN、支援受け入れの窓口のPEACEBOAT、町内の拠点Peri.など、各地各団体に声をかけながら、団体間の隙間を埋めたりしています。

SPF

佐賀県域で活動する災害対応のための中間支援ネットワーク。
現地の中間支援団体としての彼らへのノウハウ提供をしています。現地で何が課題なのかどんな対策が必要なのかなどを提示したり、一緒に現地の調整をしています。
佐賀市、嬉野市などで必要な支援体制を構築するための助言などもしています。