9月の頭に緊急支援中間レポートとして、現地の状況や活動状況をお伝えしました。今回はそのレポートの続編として、現在判明している被害件数や、今までの活動件数について報告いたします。
【被災件数】
今回被災を受けた朝倉市は、旧朝倉郡甘木市・旧朝倉町・旧杷木町が平成18年に合併し誕生した、福岡県内で4番目に広い市です。そのうちの、旧杷木町と旧朝倉町、旧甘木市の高木地区等に被害が集中しました。
床下浸水から半壊(床上浸水)の件数は朝倉地域に次いで甘木地域が多いですが、大規模半壊以上の判定件数は杷木地域が突出しています。被害件数で見ても全体の4割が杷木地域のものであり、人的被害については7割以上が杷木地域の方でした。
朝倉市HP(平成29年7月5日からの大雨による災害対応・被害状況について)より
災害NGO結では、発災直後から緊急支援として、土砂・流木の撤去による家屋や家財の救出を行っています。7月5日から9月30日までに、1,746名が活動に参加し、重機372台、ダンプ338台が活動しました。詳細な活動地域は以下の通りです。
発災から3ヶ月、今までにない規模・範囲での被災に対して、既存の支援の枠を超え重機やダンプを現場へ調整してきました。多くの専門技術ボランティアの活動の甲斐あって、発災直後に比べて重機やダンプを必要とするニーズは落ち着いてきました。
▼今までの活動風景はこちら
■今後の展望、課題
【農家支援】
発災直後は民家優先で支援活動を進めてきましたが、時間の経過・復旧が進むとともに、農家支援(仮の農道作り、流木撤去、収穫支援)のニーズへの対応も行っています。
2015年農林業センサス報告書(注1)によると、過去5年(2012〜2017)の間で朝倉市内の農業人口は減少の一途を辿っていることがわかります。今回の農地の被災により、今までの離農に拍車がかかる可能性があることが予想出来ます。
加えて、市内の農業人口の41%が農業による収入50万円以下の「小規模農家」ですが(注1)、被災した農地の復旧にかかる「工事費が40万円以上の場合は国の補助対象で、激甚災害指定を受けているため、農家の負担は数%の見通し。40万円未満の場合は、市が3割以内を補助する。」(8月24日付け西日本新聞、注2)とあるように、公的な支援が薄くなる可能性が高いのです。
朝倉市の特徴として、市街地から離れた地域に農地が多く、特に山間部に暮らす方々にとって、農業は産業である以上に生活の一部であり、欠かすことの出来ない役割を担っています。農地農道の復旧作業のお手伝いは、経済的な負担の軽減だけでなく、「農業のある暮らし」を取り戻すことで、気持ちを支えることにもつながっているのです。
【大規模半壊以下の支援】
また、10月5日付の西日本新聞の記事(注3)にあるように、日田市や東峰村と比べ、朝倉市は大規模半壊の被害件数が多く、費用負担の面から公費での解体が適応されない可能性が高いため、被災家屋の撤去費用が問題になることが予想されます。少しでも被災家屋の解体費用を抑えるために、今後家財出し等のニーズに応える必要があります。また、地区全体で大きな被害があり、集団移転を考えている場所でも、同様の問題が起こりうると考えています。
今後は、引き続き土砂や瓦礫の撤去へ専門的な技術を持つボランティアをマッチングすると共に、農家支援として農地の復旧作業のお手伝いやボランティアの受入調整などを行っていく予定です。
(注1)農林水産省「(2015年農林業センサス報告書)」
(注2)「豪雨農地復旧めど立たず 被害2000件、対応職員不足 朝倉市」西日本新聞(8月24日)
(注3)「九州豪雨3ヵ月、公費解体に格差 財源、被災数で住民明暗」西日本新聞(10月5日)
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