東北の震災から8年が経ちました。災害NGO結の活動が、あの時の仙台から始まりましたが、ここ数年は活動を理由に足を運べていませんでした。また現地に行けていないことが、余計に訪問へのハードルになっていました。
そんな後ろめたさを抱えながらも、数日間だけ東北にお邪魔してきました。訪問した感想は、やはり定期的な訪問が必要だということ。今回は宮城・岩手の数カ所をまわりましたが、それぞれの被害や地域性によって風景が変わっている点が興味深かったです。
最初に活動で関わった仙台宮城野区。沿岸部の整備が進み、道路が嵩上げされていました。市街地では開発が進んで新しいマンションが立ち人口が増えたりと、色々な形で街が変わっていっています。当時から交流があった被災後仮設に入らず、踏ん張っていた方が立ち上げたお茶飲み手芸サロン「つぎはぎすっぺ茶」にお邪魔しました。未だに近所の方が集まっていて、手と口の両方をせっせと動かしていました。隣の七ヶ浜でも、地域の人が集まる場が継続的に運営されていました。
岩手県陸前高田市でも、高台に作られたオシャレな建物で運営されている集まる場にお邪魔しました。料理教室やシネマ会、古本交換会やハンドメイド講座まで、幅広い集まる機会が設けられている素敵な場でした。
しかし国の復興予算で高台に作り変えたものの、大規模な高台工事に時間を要し、街が作られ始めたのもここ数年になってから。計画段階では街に戻ってこようとしていたけれど、待ちきれずに離れてしまった人も多いそうで、買い取り手のない土地や復興住宅の空きが問題になっています。どこにも共通しますが、計画当時には予想しきれなかった人の流れが、新たな課題や問題を生み出しています。
震災と津波の影響は北部ほど大きく、石巻市より北部(女川・気仙沼・南三陸と岩手県)では、街が一から造られたような印象を受けました。復興住宅と真新しい外観の商店がポツポツ並ぶ町並みが、共通しているような気がしましたが、市町村によって進捗具合はまちまちでした。震災遺構についても対応が分かれていて、街のシンボルのような構造物をいくつも保存しているところもあれば、ほとんど撤去されてしまったところもありました。市町村での対応が分かれた点には、その行政区内での被災の度合いも影響しているかもしれません(沿岸部は被災しましたが、中心地区は大きな被害を免れたところもありました)。
また、地域によってはデザイン性の高い建物や商業施設が並んでいましたが、人影はまばら。国内の修学旅行やインバウンドの影響はあるようですが、土日なのにこんなに店が忙しくないと話す人が居るように、時間の経過とともに観光客の数も減少しているような気配でした。
その一方で、災害直後に多数の外部支援団体が入った石巻市などでは、未だに複数の支援団体によるコミュニティ支援などが継続して行われています。カーシェアリングで復興住宅での移動手段の確保やシェアコミュニティの形成支援、移動支援として自力移動が難しい方の支援、戸別訪問による見守り支援など、基本的にはコミュニティの維持形成や見守り支援が主です。
当初は外部から来た支援者が移住したり、スタッフが地元出身者に入れ替わったりと、地元化が進んでいました。またそういった団体のボランティアとして外部から定期的に関わる人もおり、一定の人口の関わりが見られました。これは、最近よく言われる関係人口の創出として、今後人口減少が特に進む地方でも参考にできることが沢山あると感じました。
3日ほどの短い行程でしたが、久しぶりの東北訪問で色々なことを見ることができました。特に街の物理的な変化は、あの発災直後からは想像が追いつかず、どこがどう変わったのか、当時を思い出すのが難しいほどでした。この変化を見て、改めてボランティアという力は復旧作業を前に進めるのではなく、作業を通して被災した方に寄り添うことに発揮されるものだと感じました。
また、復興住宅から出て次の住処に移る、つまり復興住宅がゴールではないことや、被災者が支援を受けることになれて麻痺してしまい、自分のことができなくなる支援慣れなど、どこの被災地でも共通して起こる問題を再確認することができました。
そしてこれらの問題は、2016年に地震被害を受けた熊本や、2017年豪雨の朝倉市・日田市など、最近被災地になった地域にも共通するところがあります。
そして東北で継続的に活動している団体の失敗事例や工夫した事、新たな試みやその背景などの生かせる教訓やヒントを、もっと後の被災地に繋いでいきたいと思っています。
【東北訪問先】 宮城県 つぎはぎすっぺちゃ(仙台市) きずなハウス(七ヶ浜町) OPEN JAPAN&日本カァーシェアリング協会(石巻市) 移動支援Rera(石巻市) 3.11みらいサポート(石巻市) ON THE ROAD(石巻市) 女川町 気仙沼大島(気仙沼市) など 岩手県 ほんまるの家(陸前高田市) 潮目(大船渡市) 鵜住居復興スタジアム(釜石市) など
◇東日本大震災の当時の被災地の様子→こちら