9月17日から21日まで約4日間、千葉県内の台風被害があった地域を調査しました。千葉県全域での影響が報告される中、県内全体の被害状況が情報としてまとまっていないと感じました。
そのため、千葉での調査は、
全域での被害状況の把握、特に屋根被害はもちろん、家屋に被害を受けた人の生活状況、今後必要な支援を把握したいと考えました。
また、屋根の被害について「ボランティアがブルーシートをかけて対応する」という手段に頼っている面があります。住民などが転落死している事例も出ており、そもそもボランティアに頼むべき作業なのか、という点で疑問を持ちます。そこで、できるだけ安全に屋根の被害に対応できるか、できるだけボランティアじゃない人が対応できないか、という提案と具体的な体制づくりができないかと現地入りしました。
現地の様子
鋸南町・館山市・南房総市・鴨川市など、千葉県南部の地域での被害が目立ちました。全壊や半壊といった大規模な被害は南部に集中しています。全体に被害件数が多いのも南部で一部損壊の数も相当な件数です。県中部でも一部損壊が置くあり、北部にも及びます。特に鋸南町では、町の家屋6〜7割が被害を受けています。町が全体的に被害を受けてしまい、今後どれくらい細やかな対応ができるのかを見守る必要がありそうです。
また、今回は家屋被害だけではなく、農業、漁業など第一次産業を中心に産業被害も出ています。ある試算では、東日本大震災の当時よりも被害額が大きくなっているという。家屋の再建に必要な資金を用意するにも、仕事場も被災している、そんなケースも多くありそうです。そうなると、生活再建にも遅れが生じるだけでなく、経済的に厳しい状況に陥る方も増えてしまうでしょう。
そして、なんといっても今回特筆すべきは、屋根の被害への対応です。膨大な数の被害件数にできるだけ対応しようと、熊本地震や大阪北部地震など各地で屋根の応急手当をしてきた複数の団体が、千葉で活動を始めています。しかし、対応が必要な件数が多く、そもそもその活動に必要な技術が高いことなどから、「ボランティア」の活動の域を出ていると感じています。
このため、できるだけ既存の組織や体制で、応急手当ができるように、消防・自衛隊・業者に向けて応急手当についての講習をしています。耐久性の高い資材について、応急手当について、安全面の確保などが主な内容です。実際に、経験のある支援団体からは、作業でよく使うような安全靴から、滑りにくい足袋へと足元の装備を変えるようにアドバイスが入ったりしています。
一方で、各地で様々な支援団体が活動をしています。経験のある団体で、安全を確保するためのガイドラインを共有し、調査で訪問した際は、そのガイドラインを他の団体へ共有しました。
今後の課題
・雨漏りのまま、在宅避難をしている人も多い。一部損壊の被害でも、今度雨漏りによる家屋や家財の傷みが進行したり、カビの発生で健康被害に発展する可能性もある。寒さ対策なども必要になるが、一部損壊の被害にはほとんど補助制度が使えないため、基本的には自費での再建が必要になってしまう。
・ブルーシートでの応急手当は、所詮応急手当でしかなく、再建には本修理が必要になる。しかし、本職の瓦職人が少ないため、本修理まで数ヶ月〜半年以上待たなければいけないケースもある。その間の期間、一度張ったブルーシートだけでは対応できず、ブルーシートの劣化に伴い張替えが何度も必要になってしまう。
・屋根上ニーズに対応している団体が、ほとんど県外からの外部支援団体。屋根の下の作業に関しても、外部からの支援が多く、地元支援者の姿が少ない。今後、継続的な支援のためには地元支援者/団体の基盤整備が必要になる。
また、現地に入っている団体同士の連携を取り持ったり、活動のコーディネートをできる人がいない。直接支援者たちのバランスを調整する人が必要。
・そもそも、屋根の案件にしても、倒木の処理にしても、件数が多すぎることと、一つひとつの案件の危険度がとても高い。本来ボランティアでやるべきことなのか、もっと安全に作業できる人が担当できるような仕組みづくりが必要ではないかと考える。
・南房総市が、広域で合併してできた市町村でエリアが広い。そのため、市内の被害状況を把握することがとても難しくなりそう。
・家屋内の片付けは、社協のボランティアセンターで一般ボランティアが、屋根上ニーズに関しては、NPOなどプロボノが、という2種類のボランティアが動いている。件数の割合では、屋根上ニーズが圧倒的に多いため、社協のボランティアセンターが先に閉鎖する可能性が高い。閉鎖後は、資機材やニーズ、人のやり取りで連携が難しくなる。