7月レポート

「扇風機の風が来て、冷たいビールを飲んだら涙がでてきた」

と話すおじちゃん

金沢のみなし仮設に入居していましたが、地域にできた建設型仮設住宅への移動を希望されています。
しかし、簡単に入居は決まらず順番待ち。
仕事が始まってしまったので、解体を決めた家で生活を始めています。

最初に解体を決めた時に、電気は切ってしまったそう。
再度通電するのが難しいらしく、電気と水が使えないままの生活です。
そんな生活状況が判明したので、一緒に活動する仲間がポータブル電源やひんやりマットなどを持っていってくれました。

地震直後の避難環境が整わなかったことで、冬の間にかなりたくさんの方が遠方に避難されました。
ライフラインが確保できる生活をと、とりあえずと出てきた金沢などに生活拠点を移された方も多くいらっしゃいます。
そうして仮住まいの場所をみなし仮設(アパートなど賃貸物件を仮設住宅とみなす制度)をとして生活を続けられていたケースがたくさんあるのだと思います。

このおじちゃんも、書類上はみなし仮設を利用しているものの、在宅に戻っているケースでした。

書類上と実際の居場所が違うケースは、特に今回多いかもしれません。
奥能登各地で同じケースに出会っています。
理由はさまざま。
都市部での生活に適応できなかった、仕事が再開したから地域に戻る必要があった、など。

みなし仮設→建設型仮設への住み替え申請は、今までの被災地史上最も多発しているのではないでしょうか。

書類上は、みなし仮設制度を利用しているので、公的な見守りの優先度は下がります。
しかし、実際は水も電気も来ていない家で生活されていたりする。
つながりが深く、地域の方の動向をお互いに把握しあっている地域でも、山間部などにひっそり戻ってきた方を随時把握するのは困難です。
行政側がそれを把握するのもかなり至難の業。

在宅や仮設、みなし、それぞれの生活状況の定期的な把握が大きな課題です。
しかしこの課題をクリアできるような解決策は今のところありません。

被災された方の生活の見守り事業は、各地でスタートしています。
でも、広い能登半島中をつぶさに見守るだけの人員は、どこも確保できていません。

そもそも、どの分野でも人が足りないのです。

公費解体の進捗率は、市町村でばらつきがあるもののまだ数%です。
結構解体が進んできたな、と感じる地域もありますが、まだ一部です。
各自治体は、公費解体に対応してくれる業者さんを増やそうと対応を進めています。
屋根の修理も、水道復旧も、お墓の修繕も、高齢者施設の運営も、
専門職や職人はもちろん、地元の工場のアルバイトも、シルバー人材センターの担い手も、どこも人手不足と聞きます。

とある漁港、水揚げ高は地震前の半分だそうです。
魚はいるのですが、出荷の準備に手が足りず、結果的に半分しか水揚げできない。
別の加工場では、手選別するお母さんたちのうち半分は地震で避難したり、犠牲になったりでいらっしゃらなくなったそう。
手選別ができないので、機械の導入を検討しているとのこと。

そもそも、奥能登での産業復活の兆しが弱い気もします。
過去の被災地では、復旧バブルとして近くの繁華街がにぎわって、復旧に関わる業者からの活性化も起きました。
奥能登に宿泊施設と飲屋街が少ないこともあってか、大きな循環は生まれていないように感じます。
半島全域が壊滅的な被害を受けたことや、各地に共通する特産物が少ないことで、「買って応援」の流れも起きにくいのかもしれません。

能登地方の旅行支援なども検討されているようですが、
地域の産業にちゃんと巡っていくタイミングや方法を、しっかり検討した上で実施してもらいたいなぁと思います。
たくさん来てもらってもまだ復旧していませんとか、人手足りなくて対応できませんとかにならないように。
私たち外部の支援も、うまく産業のサポートができたらなと検討中です。

多くの方が仮設住宅での生活を始めています。
しかし、仮設に入った方全員の生活が安定した、というわけでもありません。

建設型の仮設住宅、基本的に水回りにお部屋がついているタイプです。
1部屋〜3部屋までのパターンがあります。
一人暮らしの方は、もちろんワンルーム(1K)
二人暮らし世帯も、このワンルームタイプの場合があります。ふた部屋タイプにあたればラッキー。

5人世帯で3部屋だと生活できないから、と両親と子どもたちを仮設に住まわせて、自分は在宅でどうにか生活されているケースもあります。
どのタイプにしても、かなり狭くて収納がないのが仮設のスタンダードになっています。
同じ家族といえど、プライベート空間がとれなくなっています。

親子2人で一部屋なので、親が部屋に寝るので車中泊をしている息子さんがいらっしゃったり
娘が夜勤から帰ってきて同じ部屋にいたら寝られなくてかわいそうだから、と外を歩きに出るお母さんがいらっしゃるとの話を聞きました。
介護虐待のようなことや、気を使いあってお互いが苦しいようなことが起きています。
今後も狭いことで起きる家族内の課題が出てきそうです。DVなども増えるかもしれない。

水や電気が整わない自宅か、狭い仮設なのか。
どっちが良いと思うのか、それぞれですが
少なくとも、仮設住宅の入居が済んだからもうOKだよね、とは言えないなと感じます。

仮設住宅など仮の生活だからこそ、進んでいく課題もあります。
今までの避難生活によって、体の機能が大幅に落ちてしまった方も多くいらっしゃいます。

今まで集会所での集まりに歩いて通えていたけど、地震後の生活で体力が落ちてしまって、同じ場所なのに帰り道がしんどくなったという話も。
災害後に認知症になったり悪化するという事例はたくさんあります。
今回の能登半島は高齢の方も多いので、この課題は今後大きくなりそうです。

残念ながら、関連死についての課題も大きくなっていくと感じます。
県発表の犠牲者数が増えてもいるし、現地でそうした話も耳にします。

生活再建のめどが立たないこと、今までできたことができなっていくこと、いつもあったものがなくなっていくこと、収入のめどがたたないこと、生活再建への希望が持てないこと、

変わらず続く息苦しい気配が、関連死を増やすことがないように、できることを続けていきたいと思っています。

「能登を応援したくても物理的に来られない人も多い。それなら能登持って行こう」

ということで6月の後半くらいから、少しずつ能登から各地へ出張しています。
全国からご支援いただいた方への報告会と、能登物産販売会をいっしょにやっています。
半年たった能登の課題や現状をお伝えしつつ、能登の良いものをお土産に持って帰ってもらいたいなという企画です。

もともとお声かけいただいていた講演会などとも組み合わせて、九州〜関西方面にお邪魔しました。
今後も各地で予定を合わせて実施できたらなと思っています。
*能登物産の販売は「Social Shop半人前」名義

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